若者よ、なぜ捨て駒を目指す?

就活事情を観察していて無駄に将来を悲観or自己過信して勝ち目の薄い博打をする子たちが気になっている。

自称、他称問わずベンチャーに就職しようとする人たちというのは零細企業に就職するという意識があるのだろうか?
安定雇用と福利厚生の約束された財閥系大企業より一見、ハイリスク・ハイリターンに見えるベンチャーというのはそんなに良い就職先なのだろうか?

ベンチャーの人材で必要なのはアイデアを創出できるごく一部の人材だ。
確かにそういう人材になれる自信があるのならば、ベンチャーに入ることも悪くない。
しかし、勉学を捨ててスポーツや音楽に打ち込んだ人のホトンドが満足な学歴や経歴を得られずにうだつの上がらない余生を過ごすように、才能によって勝敗が左右される分野に足を踏み入れるということはその才能が無かったときにリカバリは効かない。
ビジネスの世界でもそれは同じなのだ。
そしてアイデアマンというのはそうそうなれるものではない。

もう一つの問題が、仮に入ったベンチャーが成長したとして、零細企業と大企業では経営のスタイルが全く異なることだ。
仮に大企業化の立役者として振舞えたとしても、大企業化後に黎明期の人材は軒並み首を切られるか止めていくのがベンチャーの常である。
少数精鋭で素早いデシジョンを出せていたベンチャー時代に活躍したアイデアマンたちは、大企業化、マンモス化した自社で稟議を通す作業の煩雑さに嫌気が差すだろう。
領収書の提出が6ヶ月遅れるが大口顧客を引っ張ってきていた営業マン達は経理から厄介者扱いされる。
親分肌のカリスマ経営者はIRから黙ってろといわれて元気を失う

上で書いたのは様々な上場ベンチャーで実際に起こっていることだが、ベンチャー志向の学生はその辺も良く調べずに口を開けばベンチャーという。


成長する企業には大きく分けてlaunch と cruiseの2つのフェーズが存在する。launchフェーズで活躍する人材は多くの場合、ロケットのブースターよろしく大気圏突破の段階で切り離される。
cruisingフェーズでも企業の中で活躍するためには大企業の冗長性を持ったマネジメントノウハウを学ぶ必要があって、これはベンチャーでは学べないことなのだ。
成長したベンチャー企業が経営陣入れ替えで大企業からマネジメントスタッフを引っ張ってくるのはコレが理由である。
ベンチャーに就職しようという人たちは若いうちにエネルギッシュな生き方をするために自ら使い捨てのコマになろうとしているというのに気づいていない。
一生のうちで若い期間なんてごくわずか、20代の約10年と、30代以降の約30年でどれほど生活の重みが違うことか・・・。
奥さんと子供抱えて路頭に迷う夢に敗れたおとっつぁんが増えないことを願いたい。